「月の番人」の感想 トム・ゴールド著

本の紹介

大人になってからもたまに絵本を読みたくなる。絵本特有の、安心感のようなものが多分好きなのだ。

「月の番人」は、完全にジャケ買いだった。2色刷りの静かな月面を歩く主人公。会話のないページも多い。絵本から伝わってくるのは静寂。私にとってそれは、とても安心感のある静寂だった。

この世界では、特に事件は起こらない。ただ次々に月から人が減っていくだけ。みんな地球へ帰るのだ。この平凡で退屈な月での生活が、私には新鮮に思えた。妙にリアリティがあり、自分の中の寂寥感を彷彿とさせるような。それでいて、心に平穏を宿してくれるような、そんな作品。

何も特別なことが起こらない作品は、大抵評価が割れる。つまらないと思って放り出してしまうか、ずっと手元に置いておきたいと思うか。私は完全に後者である。一般的につまらないと評されがちな作品ほど、何度も見返してしまう。

例えば、映画「2001年宇宙の旅」もそうだ。正直に言って、私もあの映画が特別に好きというわけではない。でもなぜか何度も見返したくなって、時々、早送りしながら再生する。多分あの、優雅で無機質で人の感情が忘れ去られているような、あの空気感が病みつきになるのだ。

この作品も、それと似ていた。特に面白いというポイントはないけれど、いつも枕元に置いていて、寝る前にたまに読み返す。そんな肩肘張らずに、夜の読書のお供にできる希少な作品だ。

絵も好きだ。程よく没個性的な人物たち。シンプルな線。大きな余白。大胆な構図。

夜、静けさに浸りたいとき。ただなんとなく本が読みたい気分のとき。癒されたいとき。暇なとき。そんなシーンで、ぜひ本書をおすすめしたい。

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